焼却炉とはゴミなどを燃焼させて処理する焼却処理の1種であり、焼却炉の活用を考えるに当たって排出されるガスをどう処理するのか、排ガス処理について検討することは不可欠です。このページでは、焼却炉と排ガス処理の関係について解説しています。
焼却炉とは、ゴミなどを燃やして処理するための焼却処理施設の1種です。
ゴミの無害化や減容化、再資源化などを目指して行われる焼却処理には、大きく「焼却炉」と「溶融炉」の2つがあり、焼却炉は最初にゴミなどを燃やして処理することを目的としています。なお、溶融炉とは焼却炉で発生した焼却灰を、さらに高温下で溶融するための施設です。
焼却されたゴミは焼却灰となり体積を減じて、また一定の有害物質なども高温によって処理できるといったメリットをえられるため、ゴミ処理に活用できる土地が限られている日本において、焼却炉の活用は環境対策として重要なポイントといえるでしょう。
ゴミ処理対策として欠かすことのできない焼却炉や焼却処理ですが、ゴミを燃やすことで煙やガスが発生したり、有毒な物質や悪臭が周囲へ広がったりといったリスクもあります。
また、ゴミの燃焼によって生じる二酸化炭素は温室効果ガスとして世界中で削減を目指されており、焼却炉を健全に活用していくためにはこれらの排ガス処理についてもしっかりと対策を講じなければなりません。
一般的な焼却炉の種類としては以下のようなものが挙げられます。
1から3までは、熱によってゴミを燃やして処理する従来型の焼却炉です。一方、4と5は燃焼時に発生したガスを回収しつつ、さらに焼却灰などを溶融する焼却炉と溶融炉が一体型になっているものとなります。
なお、6の「灰溶融炉」は従来式の焼却炉で生じた焼却灰を溶融したり減容化したりするための施設です。
ゴミを焼却した時に出るガスの1種に「塩化水素」があります。塩化水素は人体に有害な物質であり、一定以上の規模の廃棄物焼却炉(火格子面積が二m2以上であるか、又は焼却能力が一時間当たり二〇〇kg以上であるものに限る)において「塩化水素の排出基準は七〇〇mg/Nm3(約四三〇PPm)」といった排出基準が定められています。
窒素酸化物(NOx:ノックス)もまた注意すべき排ガスの1種として重要です。
昭和52年6月18日から適用されている窒素酸化物の排出基準では、廃棄物焼却炉(排ガス量が4万Nm3/h以上のものに限る)において「二五〇ppm」と設定されており、必要に応じて排ガス中の窒素酸化物濃度も測定しなければなりません。
各メーカーで取り扱っている焼却炉向けの排ガス処理設備を紹介します。
排ガス中の様々な物質を除去できる、軽量低密度高捕集セラミックフィルターを搭載した排ガス処理装置です。ダイオキシンや窒素酸化物、硫黄酸化物、VOC(揮発性有機溶剤)なども除去することができます。
画像引用元:株式会社ハイポテック(https://hipotech.co.jp/plant/product01/product7/)
株式会社エコムでは、悪臭を持った排ガスを加熱し、酸化反応によって処理するシステムを用意しています。また加熱方法には、直熱・触媒・蓄熱の3種類があり、制御温度や排ガス処理施設や焼却炉の規模などに応じて選択することが可能です。
画像引用元:株式会社エコム(https://ecom-jp.co.jp/product/furnace/deodorizing/index.html)
焼却施設から発生する焼却排ガスに関して、ガス中に含まれている粉塵などを収集するための施設です。対応できる排ガス量は「14,500 Nm3/H」とされています。
画像引用元:株式会社エステーリンク(https://www.shujinki.jp/archives/category/case/case-type-industry/case-industry-incinerator)
2010年の創業以来、数多くの企業の排ガス処理装置を設置してきたイーテクノは、ものづくりを行う中小企業のコンシェルジュをテーマに、コスト低減のための設備導入を提案している会社です。国内10数社をパートナーに排ガス処理装置を製作しているほか、海外ではベトナムにもパートナー企業を持ち、コストを意識した装置を製作してくれます。一般ごみ焼却炉の排ガス処置装置の納入事例では、排ガスを90%除去した実績を持っています。
高カロリーの廃プラや廃溶剤、廃油等で水分の多い汚泥、スラッジ、廃酸、廃アルカリ、廃液など、さまざまな廃棄物の混合燃焼ができる焼却炉を製造するクレハ環境。炉床を回転させることで同時に混焼する自社開発の技術を強みとしています。焼却炉に湿式排ガス処理設備とミストコットレル(湿式電気集塵機)を組合せることにより、高度な排ガス処理が可能に。発生した排水の中和や不溶化処理、脱水処理の効果も得られます。
環境関連の設備機器の設計・開発を行う三和エンジニアリング株式会社が関係会社との協力で作り上げたのは、有害物質を効果的に除去する排ガス浄化設備。焼却炉専用のバグフィルタを組み合わせて設置することで、媒塵と有害ガスを効率よく除去します。フィルタに厚みを持たせることで、1μ以下の細かい煤塵も捕集できるとのこと。顧客ニーズに合わせた設備・機器の設計はもちろん、据付まで一貫対応してくれます。
直接燃焼式と蓄熱燃焼式、2つの排ガス装置を開発している企業です。低カロリー排ガスや窒素化合物含有ガスなど、排ガス処理のニーズに応じて適した装置を提案してくれます。小型から超大型まで、設備規模に合わせた依頼も可能。その自由度の高さから、さまざまな業種・規模の現場で求められています。水平横置型にすることで、点検や補修に必要な足場製作を不要にしました。また、各機器も架台上に設置されておりメンテナンスも容易です。
排ガス処理装置をはじめ、排水処理装置や熱処理装置、表面処理装置など、幅広い商品を展開しているクラボウ。焼却炉用排ガス装置はシンプルな構造ながらプロセスが自動制御されており、運転操作がしやすいと各方面から評価されています。塩化水素、硫黄酸化物等の酸性ガスの高度除去ができる都市ごみ焼却炉用の排ガス処理装置も開発。ガス再加熱器との組み合わせで白煙の発生を防止することもできます。
国内で最も普及している「ストーカ式」の焼却炉を開発・製造するタクマ。ストーカ式とは格子を階段状に並べた燃焼装置で、効率よく燃焼が行われることから多方面で採用されています。焼却炉から出た排ガスは、廃熱ボイラ、エコノマイザ、減温塔で温度を下げたあと、ろ過式集じん器で有害物質を除去して無害化。消石灰を含む飛灰をろ過式集じん器に再投入することで、従来は廃棄していた未反応薬剤を有効利用できるほか、最終処分量も減らせます。
排ガス対策を備えた焼却炉製造のほか、廃棄物による発電事業も手掛けているJ&T環境。「あらゆる廃棄物を、価値ある資源に。」をモットーに、SDGsの実現に向けて積極的にリサイクル事業に取り組む会社です。「キルン」と呼ばれる回転ドラムで焼却する「キルン型焼却炉」を採用。苛性ソーダを吹き込み塩化水素や硫黄酸化物を除去したあと、さらにバグフィルタや触媒などによってダイオキシンや窒素酸化物を除去する高度な排ガス機能を備えています。
「技術の企業集団」として、国内外に100を超える関連企業を持つ川崎重工。長年のプラント製造の実績を活かして、ごみ焼却技術の低負荷化や高効率化を目指したシステム開発を行っています。排ガスの再循環によって低空気比高温燃焼を強化し、排ガス量の削減や有害物質の生成抑制を図る「アドバンストストーカシステム」の設計・製造に加え、減温塔やろ過式集じん器、湿式洗煙塔などの排ガス処理システムのオーダーにも対応しています。
国土が限られており、一方でゴミの排出量が多い日本国内において、焼却炉などを活用した焼却処理によってゴミの量を減らしたり、無害化を行ったりすることは非常に重要な工程です。
一方、焼却処理には粉塵やガスといったものが発生するリスクがあり、必ず適切な排ガス処理施設を導入して、包括的な安全面に配慮することも同様に欠かすことができません。