塗装や印刷、接着や洗浄といった工場の生産ラインでよく見られる工程において使用される溶剤などに起因して発生するVOC(揮発性有機化合物)。その特徴や及ぼす悪影響をはじめ、工場運営に関連する注意点や対策などを紹介します。
VOCとはVolatile Organic Compoundの頭文字をとったもので、日本語では揮発性有機化合物と表記します。
VOCは塗料や印刷インキ、シンナーや接着剤、さらには洗浄剤やガソリンなど工業と深く関わりのある資材に含まれるトルエンやキシレン、酢酸エチルといった物質がベースのリスク要因。これらが工場の排ガスに含まれていると大気の光化学反応によって光化学スモッグの発生要因となり、施設などで使用されていた場合は、シックハウス症候群や化学物質過敏症の原因にもなる可能性があります。
中でも塗料は環境省「揮発性有機化合物(VOC)排出インベントリ報告書(平成28年3月)」によると「発生源品目別VOC排出量(推計値)H26」で全体の40%を占めるほど。多くの産業・生産工程で必要とされるだけに、しっかりとした対策が求められます。
排ガス処理は、除害すべき物質や対応方法によって、適した装置が変わってきます。そんな時に会社や排ガス処理装置をどう選べばいいのか、具体例と共に解説します。
工場などにおけるVOC(揮発性有機化合物)については大気汚染防止法が定める「揮発性有機化合物排出施設(VOC排出施設)」によって排出基準が設定されています。東京都環境局HPに、2020年4月8日更新の「揮発性有機化合物排出施設の種類と排出基準」という一覧表が掲載されていますが、ここでは施設の種類を抜粋・要約しておきます。詳細は引用元でご確認ください。
上で触れた「揮発性有機化合物排出施設(VOC排出施設)」に該当する工場なら、大気汚染防止法が定める排出基準をクリアするための対策をしなくてはなりません。
代表的な施策は排ガス処理装置の設置ですが、方法としてはもうひとつ、資材などを非VOC材料に置換するという対策もあります。後者は個別具体的な課題なので、割愛しますが、排ガス処理装置の設置にあたってはさらに留意すべきポイントもあります。
VOC排出施設では法規制をクリアするだけでなく、自主的取り組みとして業界団体や企業単位で独自の排出抑制を実施しているケースがあります。これには企業のイメージアップといったCSR的側面だけでなく、自社工場に適した対策ができること、それに伴って費用対効果の向上、従業員への啓蒙・教育といったメリットも生まれます。