排ガスに含まれる硫黄酸化物(SOx)といった有毒酸性ガスについて、大きく2種類の排ガス処理装置が考えられます。一つは固体触媒や吸着剤を活用した排ガス処理装置であり、もう一つは吸収液を活用した排ガス処理装置です。
固体粒子などを触媒として活用する脱硫システムには、さらに水素化脱硫法や活性炭などに吸着させる方法があります。一方、吸収液を活用する脱硫技術として、天然ガス中の硫化水素を炭酸ナトリウムと亜ヒ酸ナトリウムの混合水溶液に吸収させ、結果として硫黄を回収するといったシステムや、石灰スラリーによって燃焼ガス中の二酸化硫黄を吸収し石膏として回収するといったシステムがあります。
どのような脱硫装置や仕組みを採用するかは、硫黄酸化物がどのような理由で発生するのか、どのような状態で存在しているのかなど、細かな条件を確認した上で検証することが必要です。また、システムによって必要になる装置が変わるため、まずは専門家と相談して現状を適切に把握するようにしてください。
硫黄酸化物の発生要因は様々です。また、石油や石炭といった硫黄成分を含有する燃料の燃焼などによって発生した硫黄酸化物にも、二酸化硫黄や一酸化硫黄、三酸化硫黄など複数のタイプが含まれています。なお、一般論として硫黄酸化物の排出基準などについては二酸化硫黄が代表として考えられるでしょう。
大気汚染や環境問題に対する意識がまだ薄かった昭和30年代~40年代において、全国の工場から排出された硫黄酸化物が空気中に散布され、例えば四日市ぜんそくなどの大気汚染問題/公害病などを発生させました。
また、人体へ直接的に悪影響を及ぼさないとしても、硫黄酸化物が溶けた雨は酸性雨として地域に降り注ぎ、様々なものを腐食させるなど公害問題として重要なテーマとなりました。
大気中に排出された硫黄酸化物は大気汚染を引き起こし、場合によっては深刻な公害病の原因となります。そのため、人々の健康を保護する観点から硫黄酸化物の地上濃度を安全基準値以下にまで抑えることが重要となっています。
脱硫装置の開発が日本国内で本格化したのは、公害病などが社会問題として表面化してきた1960年代前半頃です。1966年には工業技術院による大型プロジェクトとして「乾式法」を採用した排煙脱硫が注目され、脱硫率90%を目指す国産排煙脱硫技術の開発が進みました。その後、1974年に硫黄酸化物の総量規制が導入されたことを契機に、「石灰-石膏法」が採用され、80年代以降は事業用火力発電所の脱硫装置は石灰-石膏法が一般的になっています。
各メーカーで取り扱っている脱硫装置を紹介します。
三菱重工の排煙脱硫装置は、二酸化硫黄が含有されているボイラー排ガスから硫黄成分を除去・浄化する脱硫装置です。石灰-石膏法と海水法を取り扱っており、最高100%の除去率を目指した脱硫装置や排ガス処理装置を導入することができます。大規模な処理には石灰-石膏法、コストを抑えた装置では海水法が採用されます。
川崎重工業株式会社では事業用ボイラーから排出される硫黄酸化物を除去するために、主としてマグネシウム法排煙脱硫装置か、石灰-石膏法排煙脱硫装置がラインナップされています。特に、石灰-石膏法排煙脱硫装置に関しては、川崎重工業が独自に開発したスプレイノズルが採用されており、高脱硫性能・高除塵性能を発揮している点も見逃せません。
燃焼ガスに含有されている二酸化硫黄を、水酸化マグネシウムや苛性ソーダを吸収剤として用いることで除去し、廃液として固定放流あるいは回収します。脱硫率は99.5%以上となっており、長期の安定運転を目指せることがポイントです。
大気中に拡散された硫黄酸化物(SOx)はかつて日本全国で深刻な公害病や大気汚染問題を引き起こした原因物質であり、その除去は社会の安定や人々の健康保護において重要な課題となっていました。
日本では脱硫装置として様々なシステムが開発・実用化され、現在は石灰-石膏法や海水方、苛性ソーダ法など工場の規模やコストに合わせて適切な脱硫装置がプランニングされています。