排ガス処理で使われている消石灰は、土の酸度を調整したり、以前は学校のグラウンドでラインを引くために使われたりしていたものです。排ガス処理における消石灰の特徴や、課題などについて解説します。
排ガス処理において、消石灰は乾式で活用されています。乾式には、全乾式と半乾式があり、消石灰はどちらでも使われるものです。
全乾式は、消石灰など非常に細かい粉末を「バグフィルタ」と呼ばれる布や不織布性の袋状のフィルタの上流に噴霧して、酸性ガスを中和吸収します。消石灰を使用する方法は、有害物質の除去率が高いのが特徴です。特に、塩化水素、硫黄酸化物除去率については、湿式法に近い性能が期待できます。
半乾式については、消石灰スラリーや苛性ソーダ水溶液を反応塔内に噴霧することによって、酸性ガスを除去する方法です。水への吸収に加え、中和を行うことになるので、除去能力が高い特徴を持ちます。
ただ、消石灰について全乾式と半乾式の除去率はそれほど変わりません。取り扱いは全乾式のほうが簡便です。更に、半乾式では完全に消石灰を乾燥させるのに大きな反応塔を用意しなければならないため、日本では全乾式排ガス処理のほうが多く利用されています。
消石灰を使った方法は薬剤費が比較的安価ではありますが、湿度が高いと十分な除去率が期待できません。そのため、これを改善するためにはバグフィルタの入り口にあたる部分の湿度を低く設定する必要があります。
薬剤費が比較的安価といっても、排ガスの量によっては多くの消石灰を使用しなければならず、それがコストを圧迫してしまうようなケースも少なくありません。
また、乾式処理では他に重曹(ナトリウム系)も使われているのですが、重曹と比較すると反応性が低いのも課題の一つだといえます。反応率が低ければ、その分大量の消石灰が必要です。
乾式を用いて消石灰で処理すれば廃液はでませんが、その代わりに消石灰を大量に使えば廃棄物量が増加してしまいます。消石灰を用いて排ガスの処理をしているごみ焼却場などでは、確保してある埋立て場ではスペースが不足してしまうのではと心配しているケースもあるようです。こういった関係もあり、消石灰よりも反応性が高い重炭酸ナトリウム系薬剤を使用するケースも増えてきました。
ハンドリングが難しいのも課題といえるでしょう。消石灰を利用して炭酸ガスを中和すると、その集じん灰には、消石灰とHC1が反応することによって作られる塩化カルシウムが含まれています。塩化カルシウムは吸湿性の高さが特徴的です。
湿気を吸収するとゼリー状になる特徴を持つことから、この塩化カルシウムを含んでいる集じん灰はハンドリングが難しくなってしまう課題があります。