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塩化水素

塩化水素にかんする排出規制

廃棄物焼却炉に係る塩化水素及び窒素酸化物の排出規制について

昭和52年6月に交付された「各都道府県一般廃棄物処理行政担当部(局)長あて厚生省環境衛生局水道環境部環境整備課長通知」において、廃棄物焼却炉に関して塩化水素と窒素酸化物の排出基準がそれぞれ定められています。特に塩化水素の排出基準は、規定の廃棄物焼却炉において「七〇〇mg/Nm3(約四三〇PPm)」となっており、基準を超過する場合には必要な分別方法を確立したり、それで不十分であれば排ガス処理システムなどを設置したりすることが必要です。

塩化水素の排出基準が超過する場合における対策

まず、塩化水素の発生源として考えられるプラスチック製品や塩ビ製品などを適切に分別し、規制に対処できる体制を整えることが求められています。また、分別することが困難である場合、排ガス処理装置の高度化による対策が認められていることは重要です。

基本的には、ゴミの処理や回収の方法を見直すことを前提として、その上で対処しきれない範囲を排ガス処理装置やシステムによってカバーするという流れになっています。

廃棄物から出る塩化水素の発生要因

塩化水素が発生する要因には、廃棄物中に含まれている塩化ビニール製品が焼却されて発生するといったパターンだけでなく、家庭から出る生ゴミや紙類に含有されている無機塩なども塩化水素の発生源として知られています。

なお、現代では包装用に使われる塩ビ製品の数量は減少傾向にあり、一般ゴミに含まれる塩ビ製品は多くとも1%程度とされていることもポイントです。

塩化水素の排ガス処理設備の事例

各メーカーで取り扱っている塩化水素の排ガス処理設備を紹介します。

充填スクラバー(株式会社ハイポテック)

それぞれのクライアントの作業環境や設置条件などに合わせて、フルカスタマイズによる設計・製作が行われる排ガス処理装置です。処理可能な対象ガスとして塩化水素やSOx、臭素、塩素など様々なものが挙げられており、基本構造となるタワーインターナルや充填物には国際的に活用されているラシヒ社の「ラシシスーパーリング(RSR)」が採用されています。

塩化水素ガスの除去に関しては、事前にガスの濃度やガス組成などを調査した上で適切な設計を提案し、その上で製造過程へ進んでいることも重要です。また、白煙除去装置といったものを併設する「一体型スクラバー」をプランニングすることもできます。

塩化水素を含めて様々なガスの処理に適合できるよう、耐食材料を用いた設計が行われることもポイントです。金属系の素材であればステンレスやチタン、ハステロイなどが採用され、樹脂系であればカーボン樹脂やFRP、FEPなど複数の候補から条件に合致したものが選択されます。

充填スクラバー
画像引用元:株式会社ハイポテック(https://hipotech.co.jp/plant/product01/product3/)

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燃焼炉排ガス(ミウラ化学装置)

排ガス処理装置のメーカーとして40年以上の実績とノウハウを有するミウラ化学装置が提供している、燃焼排ガス装置です。産業廃棄物を焼却した際に発生する塩化水素や二酸化硫黄といった有毒酸性ガスに対して、アルカリ液(苛性ソーダや水酸化マグネシウムなど)による中和洗浄を経て吸収除去することがポイントです。焼却炉から熱交換器や電気集塵機などを経て吸収塔へ送り込まれた排ガスは、苛性ソーダとの反応によって洗浄液中に吸収され、除去されたガスが処理ガスとして空中へ放出されます。

塩化水素と二酸化硫黄の除去率はそれぞれ95~99%となっており、焼却ガスに含まれている塩化水素ガスなどの大部分を効率的に除去できることが重要です。

なお、吸収塔の構造や吸収塔までの経路によって、「燃焼炉排ガス」・「ごみ焼却排ガス」・「汚泥焼却排ガス」といったように様々な発生要因へ効果的に適合させられることも特徴です。

実際にどのような構造やシステムを採用するかは、事前の調査や発生段階の仕組みなどによってプランニングされます。

耐燃焼炉排ガス
画像引用元:ミウラ化学装置(https://www.miura-eco.co.jp/exhaust/nensyo/)

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高効率総合排ガス処理装置(三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社)

排ガス中に含まれる塩化水素や硫黄酸化物といった有毒酸性ガスを、消石灰活性炭特反剤や濾過式集塵機、アンモニア水などを活用して除去します。排水発生が工程として含まれないため排水処理設備が不要という点が特徴です。

高効率総合排ガス処理装置
画像引用元:三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社(https://www.mhiec.co.jp/jp/solution/wastetoenergy/exhaustgas/index.html)

まとめ

塩化水素ガスは有毒酸性ガスであり、排出基準も厳しく定められています。ただし、現代では塩ビ製品などの使用量も減っており、適切な排ガス処理装置を導入することで排出基準の範囲内に抑えられることもポイントです。

どのような排ガス処理装置が適しているのか事前に正しく調査と検証を行い、必要なシステム導入をプランニングしていきましょう。