有機溶剤を取り扱う工場でVOC対策が必須といった環境に適している触媒酸化・燃焼方式の排ガス処理装置について、特徴やメリットとデメリットなどを紹介します。導入実績の豊富なジャンルも一部取り上げています。
触媒酸化・燃焼方式は、排ガスを空気に触れさせることで酸化させるとともに、反応熱を発生させる方法を指します。主に光化学スモッグの原因ともされる物質である揮発性有機化合物(VOC)を処理するのに用いられます。 触媒酸化・燃焼方式は、一般的な燃焼方式と比べて酸化分解に必要な温度を下げられるのが特徴。VOC の酸化分解温度は 650~800℃ですが、触媒を使うことで 200~400℃まで低下させることができます。 主に廃熱回収装置(予熱器)、昇温装置、反応器などから構成され、加温された排ガスは反応器内で触媒作用により酸化分解され、排出されます。乾式のため廃水も発生しません。 化学工場等の製造プロセスで発生する排ガスや、乾燥機や塗工機の排ガスにも適用可能です。
排ガス処理は、除害すべき物質や対応方法によって、適した装置が変わってきます。そんな時に会社や排ガス処理装置をどう選べばいいのか、具体例と共に解説します。
株式会社ハイポテックは、東京八丁堀に本社のある各種環境プラントの専門企業。1997年に営業を開始して以来、各種工場を対象とした様々な排ガス設備・排水設備を提供している会社です。
触媒酸化・燃焼装置分野では、デンマークに本拠地のある触媒メーカー「ハルダートプソ社」と業務提携。同社において世界各国で500基を超える納入実績がある「CATOX/REGENOX」を取り入れ、工場現場の多種多様なニーズに応じた総合的なソリューションを提案しています。
株式会社巴紹介は、1950年(昭和25年)に設立された工業ガス関連製品の専門商社。排ガス関連はもちろんのこと、太陽電池や半導体、液晶など、様々なハイテク技術に通じる各種ガス関連サービスを力強くサポートしています。
触媒酸化・燃焼装置としては「TCSシリーズ」を取り扱い。カーボンナノチューブCVDプロセスにおけるアンモニアや、副生成される可能性があるシアン化水素などにも対応した高性能な触媒装置です。
日本パイオニクス株式会社は、1962年(昭和32年)に設立された各種ガス精製装置・排ガス処理装置の製造・販売会社。大手総合ガス企業「エア・ウォーター」の100%出資子会社でもあります。
触媒酸化・燃焼装置としては「MODEL-WGB」を販売。揮発性有機物質や有機金属錯体を高効率で排出可能な装置として、主に高・強誘導電体製造プロセスの排ガス処理に適した性能・仕様となっています。圧力監視・温度監視機能により稼働中の安全性も確保。
田端機械工業株式会社は、1947年(昭和22年)に創業したプラスチックの加工機械・装置メーカー。プラスチックと向き合うことから生まれたフッ素樹脂形成装置や電線被覆・チューブ成形装置、小型排ガス処理装置など、様々な製品の開発・製造を行っている会社です。
小型排ガス処理装置の分野では、触媒燃焼式装置となる「DEOCAT」を販売。低温燃焼とプレート式熱交換システムを搭載し、ランニングコストの低減化も図る製品です。導入を検討する企業に向けてデモ機の用意もあり。
サンレー冷熱株式会社は、1947年(昭和22年)に設立された住友電工の関連企業。大阪と東京に国内拠点を置き、韓国や中国なども含めたアジア地域に向けて悪臭・脱臭装置の提供を行っています。
脱臭関連装置として触媒燃焼式装置を取り扱い。印刷工場、石油化学工場、半導体工場、化学製品工場など、様々な業界のプラントに適した小型~大型の装置を提供しています。高効率熱交換器の搭載によりランニングコストの低減を実現。
近藤工業株式会社は、1962年(昭和37年)に創業した愛知県豊田市にある会社。自動車部品の製造加工、工作機械の設計・製作・販売、工業用脱臭装置やオフリン用熱風ドライヤーの設計・製作・販売など、様々な機械装置を手がけています。
工業用脱臭装置としては、蓄熱燃焼排ガス処理装置と触媒酸化式脱臭装置の2種類を用意。触媒酸化式脱臭装置は、発泡性金属触媒を採用したメンテナンス性の高さが特徴です。触媒分野で長年の実績を持つ米国C.P.I社と技術提携。
荏原製作所は、1912年(大正元年)に創業した各種インフラ関連・産業用装置などの設計・製造を行う大手企業。風水力事業や環境プラント事業など、環境保全に関連した製品の開発を得意とする会社です。
排ガス処理装置では、タイプの異なる9種類の装置を用意。触媒式排ガス処理装置としては、半導体酸化膜エッチング工程等で使用されるガスを高効率で分解除去する「GCR型」をリリースしています。触媒処理を行った後にHFガスの水処理を行うため燃料が不要。
旭化成エンジニアリング株式会社は、1972年(昭和47年)に設立されたプラントエンジニアリングの専門会社。旭化成株式会社の100%出資子会社でもあります。
プラント関連製品の一環として、触媒酸化式排ガス装置にも対応。排ガス中のVOCを触媒で酸化分解し、脱臭するための装置です。化学工場から排出されるガス対策、乾燥器・塗工機の排ガス対策、曝気槽の排ガス対策としての納入実績あり。コンパクトな設備なので、ランニングコストは低めです。
島川製作所は、1955年に創業した各種プラント関連装置の会社。主に、工業用乾燥機、熱処理炉、排気ガス浄化装置、脱臭装置、酸化エチレンガス処理装置などの設計・製作・販売を行っています。
触媒燃焼式装置では、従来の同社製品「MDシリーズ」をより使いやすく、より高性能に、よりコンパクトにした「NMDシリーズ」を展開。省エネ設計、制御用タッチパネルの搭載、異常時のブザー警告発信、屋内外に設置可能な仕様などを特徴とする製品です。
エヌ・イー ケムキャットは、1964年(昭和39年)に設立された各種工業製品の製造、および研究を行っている会社。主力事業の一つとして貴金属触媒を置き、関連して多様な排ガスを浄化するための触媒を提供しています。
同社の貴金属触媒製造のノウハウを結集させた排ガス処理触媒(製品名:DASH)は、すでに多くの産業分野で活用されてきた実績あり。耐熱性と機械的強度に優れた触媒として、10年以上にわたって使われ続けている事例が数多くあります。
TESSHA株式会社は、昭和21年に創業した各種環境保全関連製品の専門会社。自動車排気ガス対策用触媒マフラー、工場排ガス脱臭装置などの開発を進めている会社です。
工場向けの排ガス脱臭分野では、触媒式を採用した装置を採用。高い脱臭効率を持つ白金系触媒を使用し、窒素酸化物の発生を抑えるため低温度での燃焼を維持します。送風機を本体に内蔵した低騒音設計。運転表示が分かりやすいので操作が簡単です。
ミウラ化学装置株式会社は、1952年に創業した大阪の会社。工業用ろ過装置、排水処理装置、排ガス処理装置、脱臭装置など、排出物をクリーンな状態に戻すための各種装置を開発・販売している会社です。
塩素系VOC処理装置として、従来からある溶剤回収装置、直接燃焼装置、蓄熱燃焼装置に加え、新たに触媒酸化方式による装置を開発。環境に配慮された経済的な排ガス処理装置として、様々な業界での導入が期待されています。
新東工業株式会社は、名古屋市に本社を置く1934年創業の老舗企業。表面処理事業、鋳造事業、環境事業の3つを柱に、事業分野に関連する多彩な製品の開発・製造・販売を行っている会社です。
環境事業における主力製品の一つとして、蓄熱触媒式排ガス浄化装置「デオサーモECRシリーズ」を開発。電気電子機器、フィルム、香料などの産業分野に適した製品です。蓄熱と触媒の併用により、電気代の大幅カットを実現しています。
平岩鉄工所は、実に文政5年(1808年)に創業した江戸時代から続く老舗企業。創業当時から2022年の現在に至るまで、一貫して「モノづくり」を専門に行っている会社です。
同社の主力事業の一分野「化学機械事業」では、各種工場に対応可能な高性能の排ガス処理装置を販売。触媒技術を応用した装置として、主に化学・薬品・食品・塗装・印刷業界に向けて導入を推奨しています。導入を検討する工場に向け、当該ガスが処理かどうかどうかを確認するテスト用ラボ機を用意。
燃焼方式には、触媒酸化・燃焼方式だけではなく直接燃焼方式や蓄熱式燃焼方式など複数の方式があります。その中で、触媒酸化・燃焼方式は反応温度が200~300℃と、他の方法と比べて低温であることが優位性のひとつ。サーマルNOxやCOを生成することもなく、VOC濃度次第で排ガスの自燃もできるため、助燃料の節約にもなります。 こうした特性もあって、触媒酸化・燃焼方式による排ガス処理装置は設備自体が比較的コンパクトになり、ランニングコストの抑制にも寄与するというメリットもあります。
触媒酸化・燃焼方式による排ガス処理で注意しなくてはならないのが触媒毒対策。触媒酸化式燃焼方式の排ガス処理装置を継続使用する中で、触媒毒によって排ガスを酸化させる触媒の働きを低下させるというリスクが生じます。 触媒毒の例を挙げると、ごみや埃などの固体物質や、ハロゲンなどの化学物質があります。これらは除去しなければ触媒の機能が大きく低下するので、装置の上流にフィルターを設置したり、それを洗浄・交換するといったメンテナンスが必要となります。
排ガス処理の中でもVOCを含む工場では触媒酸化・燃焼方式の装置を導入するケースも多いでしょう。装置の筐体が比較的コンパクトで、ランニングコストも含めて費用も抑えめにできるといったメリットもあって、導入ハードルは低いと言えるのではないでしょうか。
また、触媒酸化・燃焼に限らず、排ガスを処理する方法は様々です。どの方式が自社に合っているか分からない、どこの会社に問い合わせればいいか迷っている方はトータルで排ガス処理の課題を解決できる会社に依頼するのがおすすめです。