このページでは、排ガスとして発生する硫化水素の特徴や、排ガス処理設備によって硫化水素を処理する際のポイントなどをまとめて解説しています。排ガス処理設備の導入を検討するための参考としてご活用ください。
硫化水素は特定の場所だけで発生するのでなく、発生条件さえ整ってしまえばどこででも発生する可能性があります。例えば排水処理施設やし尿処理施設、ゴミ処理施設、様々なものづくりにかかわる工場や清掃工場、石油精製場など可能性は様々です。
また、通常のオフィスや民間企業のビルの一室でも発生するリスクはあります。
硫化水素は、硫黄を含有する有機化合物などが分解されたり還元されたりする際に自然発生します。厳密にいえば、家庭の食卓で食べ物に生じたカビからでも硫化水素が発生するリスクはあるでしょう。
硫化水素を発生させる原因の1つが「硫酸塩還元菌」と呼ばれる細菌です。特に換気性の悪い環境においては硫化水素が高濃度になり、危険性が高まる可能性もあります。
硫化水素は不快な臭いを有する物質ですが、一定濃度を超えると逆に臭いを感じなくなるという特性があります。これは高濃度の硫化水素によって嗅覚マヒが発生するからです。
濃度0.02ppm程度からかすかに臭いがして、徐々に不快臭が強まりますが、濃度が20~30ppmを超えた頃から鼻粘膜に悪影響が出て嗅覚マヒや咳といった症状が現れます。
濃度350ppm以上で生命の危険が発生し、さらに濃度が高まれば死に至ることもあるでしょう。
硫化水素は金属を腐食させるため、低濃度でも電子機器の部品や基板を腐食させ、製品に悪影響を及ぼします。また、特に電子基板に使われる銅は硫化水素に弱く、不具合リスクの原因となります。
電子機器へ硫化水素が悪影響を及ぼす濃度は0.003ppmからとされており、人間が臭いを感じ始める濃度よりもさらに低濃度という点が重要です。
硫化水素の処理方法はいくつかの段階に分けられます。
まずはどのような理由で、どこから硫化水素が発生しているのか突き止めなければなりません。発生源が確定されない限り、どれだけ硫化水素を除去しても再びガスが発生する可能性があり、問題の根本的解決に至ることもありません。
硫化水素ガスの発生源や発生場所などが特定できれば、硫化水素から保護したい機器や設備、製品などを隔離します。また、硫化水素が発生している環境を密閉して、外にガスが漏れないよう処理することも重要です。
硫化水素の発生源を除去し、新たなガスの発生を抑制します。また、すでに存在している硫化水素については、空気中の硫化水素をフィルターで濾過する循環型脱硫装置など、専用機器で処理することが可能です。
硫化水素を測定する方法としては、簡易測定器や検知管といったものを使用する方法から、実際に金属片を置いて腐食状況や変化を確認する方法、さらには硫化水素濃度分析器という専用機を使って空気中の硫化水素濃度を検査する方法まで、色々なものが存在しています。
各メーカーで取り扱っている硫化水素の排ガス処理設備を紹介します。
硫化水素を含めた様々な化学物質を、クライアントのニーズに合わせたフルカスタマイズ仕様の設計によって除去します。長期利用が可能なよう本体の材質も除去物質に合わせて対応している点が特徴です。
画像引用元:株式会社ハイポテック(https://hipotech.co.jp/plant/product01/product3/)
600℃~800℃の高効率燃焼炉を活用して、硫化水素やアンモニアなど、排ガス中に含有される不快な臭気や原因物質を直接に燃焼・脱臭します。
画像引用元:エア・ガシズ・テクノス(http://www.agtechnos.co.jp/infomation/DZR_series.html)
ステンレス製のボックスの中に活性炭とフィルターを設置し、両者を併用することで、500ppmの源ガス濃度を0.05ppmにまで低下させることが可能です。
画像引用元:岡本電気株式会社(https://corline.co.jp/work/活性炭付き脱硫装置/)
硫化水素は人体や機器、設備に深刻な悪影響を及ぼしかねない上、環境や条件次第ではどこでも発生するリスクがあります。また、安易に処理機器などを設置しても、硫化水素の濃度によっては排ガス処理設備そのものを腐食させてしまう恐れがあり、環境や濃度に合わせた排ガス処理プランを検討することが大切です。