排ガスに含まれる液体の微粒子=ミストの分離除去に優れるミストエリミネーター。その構造やミストを分離する仕組み、そして公害防止をはじめとした主な用途について解説しています。
排ガス処理装置におけるミストエリミネーターとは、排ガスに含まれるミスト(液体の微粒子)を気体から分離するものです。ワイヤーメッシュミストデミスター、ワイヤーメッシュブランケットやワイヤーメッシュエリミネーターと表記されることもあります。
ミストエリミネーター自体の構造は、直径0.12~0.25mm程度の金属線を文字通りメッシュ状態に網合わせたもので、編み合わせた部分が相互に張力を持つ構造になっているのが特徴です。
装置内では下から上昇気流でミストを上昇させ、ミストエリミネーターによって気体だけを通過させる構造となっています。ミストはミストエリミネーターに慣性衝突することで次第に大きさを増し、やがて液体として落下します。こうした仕組みによって排ガスの液体成分が取り除かれます。
処理したいミスト径に応じた装置の選定をする必要があるので注意しましょう。
排ガス処理は、除害すべき物質や対応方法によって、適した装置が変わってきます。そんな時に会社や排ガス処理装置をどう選べばいいのか、具体例と共に解説します。
工場からの排ガスで白煙や紫煙の原因となるミストは、微細なものから比較的大きいものまで様々。
除去するミストエリミネーターにもいくつかの種類があるので順に紹介します。
ミストエリミネーターの一種。金属線をメッシュ状態に網合わせたもので、編み合わせた部分が相互に張力を持つ構造になっているのが特徴です。寸法、形状の制限を受けにくく、既設装置への取付けが容易なのもポイント。スプレー飛散ミストはもちろん、凝縮ミストなどの比較的小さなミストを処理するのに適しています。
ミストエリミネーターの一種。スプレー飛散ミストなどの比較的大きなミストを処理するのに適しています。閉塞に強く圧力損失が小さいため、高粘度や結晶物が含まれるガスも処理しやすいのがポイント。風量変動には弱いので注意が必要です。
ミストエリミネーターの一種。ブラウン拡散作用により、化学反応等により発生する極微細なミストも99.9%以上捕集可能です。同時に、微細なミストから成る白煙も除去可能です。装置は比較的大型なので設置スペースには注意が必要です。
ハイポテックは、東京八丁堀に本社を置く環境プラント・エンジニアリング企業。1997年に創業し、各種業界に向けて様々な排ガス・排水処理設備の提供を行ってきた会社です。
ミストセパレーション分野では、ヨークスタイルデミスターで知られる「コークグリッチ社」製の各種ミストエリミネーターをベースに、ハイポテック独自の設計ノウハウをハイブリッドさせたミスト処理を提案。発生するミスト粒子径を十分把握した上で、高精度のミスト処理装置を設計しています。
大同ケミカルエンジニアリング株式会社は、1938年に大阪で設立された化学廃棄物処理システムの専門企業。自社製品の普及を通じ、資源の回収や再生、循環使用の推進を目標に事業活動を行っている会社です。
ミストセパレーション製品としては、高性能ミストエリミネーター「デミクロン SUS製(チタン製)」をリリース。顧客のニーズに応じて、様々なガスに適応する「SK-201」、ダストの少ないガスに適応する「SK-252」の2タイプを用意しています。
神奈川機器工業株式会社は、各種ディーゼル関連事業やガスタービン関連事業、鉄鋼関連事業、一般工業用関連事業などを手がけている会社。中でも特にディーゼル関連事業を主力とし、船用・陸用のディーゼル機器に関連する各種フィルター、及びその関連機器を幅広く提供しています。
ディーゼル系事業に関連し、オイルミストエリミネーターシステムの設計・製作にも対応。様々な製品に搭載されているディーゼルエンジンの円滑な稼働を実現する、高性能なオイルミストエリミネーターを提案しています。
SMC株式会社は、1959年に設立された自動制御機器製品・各種濾過装置などの専門企業。全国54か所、海外532カ所に影響拠点を置き、東証プライム市場に上場する大手企業でもあります。
濾過装置の開発に関連し、レーザー加工ヘッド用圧縮空気浄化システム「スーパーミストセパレータ」をリリース。エアロゾル状の油微粒子を分離吸収して、オイル潤滑圧縮空気をノンオイル相当の空気へと浄化させるシステムです。濾過度は0.01μm。
CKD株式会社は、自動機械装置、空気圧関連機器、流体制御機器などの開発・製造・販売を行っている会社。グループ全体で4,000名以上の従業員を有する業界大手の一社でもあります。
得意の空気圧関連分野において、空気圧LINEの油分やオイルミストを効果的に除去する「オイルミストフィルタ」を開発。加工精度が低下した際やエレメントの老朽化をお知らせする機能や、スイッチとインジケータのダブルチェックで交換時期を判断できる機能などが搭載された、使い勝手の良いミストエリミネーターです。
社名の通り、脱臭装置やその周辺機器の専門企業。設計や開発、製作だけではなく、施工や保守までワンストップで対応している会社です。
脱臭装置の開発技術を応用し、ミストエリミネーターも開発しリリース中。捕集効率、圧力損失、耐食性、経済性に優れた製品で、すでに官公庁や民間企業への数多くの納入実績があります。
既存製品だけではなく、顧客の要望に応じたオーダーメイド仕様の製品開発にも柔軟に対応しています。
「工場のエコロジーとエコノミー」の実現を目指し、動機械の潤滑管理やミスト対策に関連した製品を専門に手がけている株式会社エステック21。工場内の特定の課題を解決する製品以外にも、工場のエコロジーとエコノミーの実現につながるトータルサポートも提供している会社です。
ミスト除去分野では、世界的なメーカーのミストエリミネーターを導入して提案。ニーズに応じ、メッシュ型、ベーン型、キャンドル型の3種類を用意しています。社屋は福岡県にありますが、要望があれば日本全国への対応が可能です。
日本スリーエム株式会社は、1990年に大阪市で創業した工場機器の専門会社。遠心分離の応用技術から生まれた様々な工場機器を開発・製造・販売しています。
ミスト除去装置として、誘引ブロワーの入口側に設置する「LGIミストセパレーター」、誘引ブロワーの噴出側に取り付ける「LGOミストセパレーター」、気体が上から下へと流れる装置に適した「LGSミストセパレーター」を用意。日本スリーエム独自の分離装置を活かしたミストエリミネーターです。
トウトクエンジ株式会社は、埼玉県に本社を置く1962年創業の会社。化学工業プラントで使用される精密蒸留・吸収塔用充填物・ワイヤーメッシュデミスターなどの設計・製作を行っている会社です。
同社のワイヤーメッシュデミスターは、これまで石油精製工場、石油化学工場、ガス化学工場などを中心に、様々な分野の工場への納入実績があり。対象となるミスト径などに応じ、6種類のデミスターを用意しています。
福岡県北九州市で1963年に創業した丸栄化工株式会社。強化プラスチック製品の設計・製造などを中心に、機械器具や管工事、塗装工事などの様々な施工を行っている会社です。
ミスト除去関連製品として「MKミストセパレーター」を取り扱い。高確率分離、低圧力損失、高耐食性、軽量、耐熱性などを特徴とした高性能なミストエリミネーターです。同社の得意とするプラスチックを主要素材とした製品なので、片手でも持ち運べる軽量性も大きな特徴です。
日本フィルトレーショングループ株式会社は、2016年に創業した各種フィルターの専門会社。業界では比較的新しい会社ながらも、2022年6月現在で60名の従業員を抱え、広くアジアや欧州に製品を供給するに至った勢いのある会社です。
フィルターの開発・製造を専門とする会社として、ミストエリミネーターも得意分野の一つ。ニーズに応じた2種類の「LGA型オイルミストセパレーター」を用意し、油煙の効率的な分離回収はもとより、油まみれの職場環境の改善も提案しています。
1975年に摂津市で誕生し、2022年現在は大阪府茨木市に本社を置く大日化工株式会社。創業から現在に至るまで、一環して脱臭関連装置の開発・製作を手がけてきた会社です。
脱臭装置の技術ノウハウを活かし、液体と気体を分離するミストエリミネーターも開発。約0.1kPaという低空気圧で圧損を抑え、ファンへの負荷をかけることなく液体を除去します。オプションのシャワー管を設置すれば、内部エレメントの洗浄・メンテナンスが容易になります。
メッシュ構造のミストエリミネーターは、網目のサイズ以下のミストを容易に通過させてしまうわけではありません。細い金属線を細かなメッシュ状にすることで、線の濡性と毛細血管現象によりミストを付着させ、さらに隣接する金属線同士の表面張力によって分子を大きくしていきます。
こうしたメカニズムをミストエリミネーターのミストキャッチャー効果と呼びます。基本的には液体・気体(ミスト)に含まれる不純物を捕集分離除去する用途に使用され、粉体の分離には不向きです。
気体とミストを分離するというミストエリミネーターの特性を活かした用途としては、主に以下のようなプラントが挙げられます。
海水淡水化の工程では不純物の除去などで利用され、水や油を含む空気を水・油と空気に分離するといった用途での利用もされています。また、公害防止対策の一環で、排ガス処理を目的としたケースでは特定ジャンルに留まらず、幅広い工場で導入されてもいます。
細かな液体の微粒子を除去するのに優れているミストエリミネーターは、排ガス処理以外にも様々なシーンで使用されています。使用目的やガス流量、ミストの密度や粘度も選定の際には考慮するようにしましょう。
また、ミストエリミネーターに限らず、排ガスを処理する方法は様々です。どの方式が自社に合っているか分からない、どこの会社に問い合わせればいいか迷っている方はトータルで排ガス処理の課題を解決できる会社に依頼するのがおすすめです。