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火力発電所

燃料を燃やして発電する火力発電所では、当然ながら燃焼などの過程において様々な有害ガスなどが発生するため、適切な排ガス装置を導入して排ガス規制基準に合致した排気を実現しなければなりません。このページでは、火力発電所において活用される排ガス装置について解説しています。

火力発電所で使用される排ガス装置の特徴

火力発電所では、ボイラーで燃料を燃焼させる際に様々な物質やばいじんが発生します。そのため、火力発電所で使用される排ガス装置は、それぞれの排ガスの成分や希望に応じた処理能力を有していることが必要です。

火力発電所で使用される排ガス装置の概要やメカニズム

火力発電所で使用されている排ガス装置には、どのような物質を除去・処理するかという点で色々なものが検討されます。

例えば、ばいじんを処理するのであれば電気の力でばいじんを集める電気集塵機が使われ、窒素酸化物や硫黄酸化物などのガスの処理に関しては脱硫装置や脱硝装置などが用いられます。

また、不完全燃焼による有害ガスの発生率を低下させるため、燃焼効率を改善するための装置が導入されることもあるでしょう。

環境省が提示するガイドライン

現在は電気事業へ新規参入する事業者が増加しており、環境省は排ガス基準に対して各事業者が適切な対策を講じられるようにと、「小規模火力発電に係る環境保全対策ガイドライン」を策定しています。

これにより、小規模火力発電所(発電出力11.25万kW未満の火力発電所)へ新規参入しようとしている事業者は、ガイドラインにもとづいて環境に配慮した対策に取り組み、二酸化炭素排出量の削減や大気環境の保全に努めなければなりません。

ガイドラインが制定された目的

一般的に、火力発電システムでは発電所としての発電規模が小さくなるほど、燃焼時の熱効率が低下して燃料消費率が増大します。また、燃料として天然ガスや石炭などが候補となりやすく、二酸化炭素排出量や、水銀などの有害物質を含んだ排ガスの処理対策といった問題も同時に考えることが不可欠です。

環境省が策定しているガイドラインにも適切な排ガス処理の必要性が明記されており、新しく小規模火力発電事業へ参入する上で、排ガス装置に関してもきちんと考慮することは非常に重要です。

火力発電所の排ガス処理設備の事例

各メーカーで取り扱っている火力発電所向けの排ガス処理設備を紹介します。

CT-121排煙脱硫装置(千代田化工建設)

石炭や重油燃焼ボイラーから発生した排煙中の二酸化硫黄分を除去処理する装置です。石灰-石膏法がシステムとして採用されており、中和剤として石灰石を使用することで、排ガスに含まれている二酸化硫黄を吸収・酸化・中和して除去します。なお、発生した石膏スラリーは脱水後に副生石膏となることもポイントです。

CT-121排煙脱硫装置
画像引用元:千代田化工建設(https://www.chiyodacorp.com/jp/service/environment/ct-121/)

脱硫装置(株式会社JERA)

火力発電の過程でボイラーから排出されたガスに関して、特に排ガスに含まれる硫化物(SOx:ソックス)を除去するための装置です。除去システムとしては、SOx含有ガスへ石灰石と水の混合液を噴霧することで中和反応を起こさせ、亜硫酸カルシウムと石灰石スラリーへ分離します。

脱硫装置
画像引用元:株式会社JERA(https://www.jera.co.jp/business/thermal-power/environment/air)

煙道排ガス分析装置(株式会社堀場製作所)

液化天然ガスや石油、石炭などを燃料とした火力発電所において発生する排ガスを検知し、窒素酸化物や硫黄酸化物といった有害ガスの濃度を連続的に測定しながら、基準範囲内に適合しているかどうかをチェックします。検出器に試料ガスが接触しない磁気力方式が採用されており、メンテナンスや耐久性についても配慮されていることが特徴です。

煙道排ガス分析装置
画像引用元:株式会社堀場製作所(https://www.horiba.com/jp/process-environmental/industry/thermal-power-generation/details/enda-9000-26773/)

火力発電所向けの排ガス処理装置を取り扱うメーカー一覧

双葉製作所:排ガス処理装置の設計からメンテまで任せられる

双葉製作所の排ガス処理装置の強みは、設計・製作・施工・メンテナンスまでを一気通貫で行える社内体制です。設計・調達・工場製作・現場据付・メンテナンスの工程でチームが作られており、それぞれの現場に精通したプロが在籍しています。据付けて終わりではなく、アフターサービスも充実。安定した稼働を目指すために、定期的なメンテナンスや補修を行い、故障や不具合を防いでくれます。

双葉製作所について詳しく見る

永興:ニーズに合わせた排ガス処理装置をオーダーできる

大手電力会社や造船関連企業など、国内大手メーカーや有名企業への納入実績が豊富な栄興。現場に合わせた排ガス処理装置をオーダーしたり大手メーカーのOEM生産にも対応してくれたりと、ニーズに合わせて細やかに対応してくれます。設計や製造、据付、メンテナンスと、ワンストップで依頼できるのも強みです。小型から大型まで様々なタイプの装置に対応してくれるので、現場に合わせたサイズの装置を設置したいといった依頼に向いています。

永興について詳しく見る

堀場製作所(HORIBA):発電効率の向上を追求する企業

火力発電の課題を解決するために、汚染物質の連続分析装置や開発実験・実証に用いられる計器など、測定や分析装置の開発を主に行っている堀場製作所。高効率・低環境負荷発電を実現するために、発電効率を向上する排煙脱硫装置や排煙脱硝装置をはじめとした設備の開発に力を入れて取り組んでいます。その技術力の高さは世界でも求められており、海外にもグループ会社を持つグローバルカンパニーです。

千代田化工建設:中規模設備から大規模火力発電所まで対応できる

石油やガスなどのエネルギー事業から化学・環境・省エネ事業、産業設備、ライフサイエンスまで、幅広い分野のプラント設計や調達、建設を行ってきた千代田化工建設。創業から70年以上にわたり培ってきたプラント建設の経験と実績を活かして、事業計画から設計・調達・建設・運転保守までを一貫サポートしてくれます。中小規模向けのテールガス処理設備から大規模火力発電所まで対応できる技術力で、海外からのニーズにもこたえています。

ジェイパワー・エンテック:水を使わない排煙浄化システムを開発

1970年代より排煙浄化システムの開発に力を注いできたジェイパワー・エンテックが作るのは、活性コークス(AC)を利用して排煙を浄化する排ガス処理装置。大量の水を使用しなくても処理できるため、これまでに国内2箇所の火力発電所で採用されています。装置本体を安全に安定稼働させるための補機や周辺設備、制御装置(BOP)の点検にも注力。最適なエンジニアリングによって、安定稼働だけでなく保守コストの削減にも貢献しています。

まとめ

電力事業や発電事業の拡大によって、新しく参入する事業者が増加している一方、排ガス問題に関する懸念も高まっています。

そこで環境省なども排ガス問題に関して対策の重要性を訴えており、火力発電所を設置する場合は適切な排ガス装置を導入することが大切です。